むつざわライフ

このコーナーでは、むつざわで出会ったさまざまな人に
むつざわでの暮らしについて、インタビューします。

穏やかな場所だからパンも優しい味わい
Vol.003

穏やかな場所だからパンも優しい味わい

「ここは海も川も山も近くにあるので、穏やかな暮らしの中に身を置きながらアウトドアも楽しめます。」

  • 坂本善生(さかもと よしなる)さん
  • お住まい:上ノ郷
  • 居住歴:東京都出身 むつざわ居住歴25年
  • お仕事:パン製造・販売

*2009年5月30日、睦沢町上ノ郷にオープンしたパン・ド・ナルには、自然酵母でつくるこだわりのパンが並びます。店内に入ると、自家製石窯で薪を焚きひとつひとつ丁寧に焼き上げられたパンのふわっと優しい香りが漂います。パン・ド・ナルのオーナー、坂本善生さんにむつざわでの暮らしやパン作りのこだわり等についてお話しを伺いました。

Q:むつざわで暮らし始めた理由を教えてください。

A:父と私の希望で田舎暮らしのできる土地をいろいろ探していました。その中でむつざわに辿り着きました。私はもともと山が好きで、子供の頃から山の中に住みたいと思っていたんです。田舎暮らしの土地の候補として、信州や那須など様々な土地を見て回りましたが、初めて訪れたときに穏やかな田園風景が印象的だったむつざわで暮らすことを決めました。

Q:むつざわでお店を始めたきっかけは何ですか?

A:むつざわに暮らし始めてからは、パン屋に勤めながら、昔から興味のあった炭焼き(※)を会津の田舎に教わりに通っていました。白炭窯の造り方を習得後は、家の裏庭に窯を作って炭焼きをしていたのですが、ある時、パンと炭窯がつながり、自家製の石窯を作ったんです。それがきっかけで、パン屋の開店に至りました。家業が日本料理屋だったからか、食べ物を作ることに子供の頃から興味がありました。 
※炭焼き:木を蒸し焼きにして木炭をつくること。

Q:坂本さんが考えるむつざわの魅力とは?

A:なんといっても立体感のある田園風景ですね! 知り合いの方が言っていたことばなのですが、「平らな土地の田園では感じられない谷(ヤツ)と田んぼの組み合わせによる立体感のある田園風景」に魅力を感じています。

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Q:休日はどのように過ごしていますか?

A:アウトドア全般が趣味なので、海でサーフィンをしたり、川や山へ行くことがあります。むつざわは海も川も山も近くにあるので、おだやかな暮らしの中に身を置きながらアウトドアも楽しめるんです。とは言え、休日も1日中休みということはなく、営業日に向けて準備をしています。薪割りをしたり、営業日の前日には窯に火入れをします。お店で出している甘食は営業日の前日、窯に火入れをするときに焼き上げています。これは焼きたてがまた美味しいんです!!

パン・ド・ナル パン・ド・ナル

Q:むつざわに暮らしてみて、うれしかったことは?

A:むつざわは、移住者に対して協力的ですね。優しい人が多く、穏やかな暮らしができますね。穏やかな場所だからか、製造するパンはとんがらずに優しい味わいなんです。場所やその土地に住む人など、環境でパンの味わいって変わるんじゃないかな、なんて思っています。

Q:むつざわに暮らしてみて、苦労したことは?

A:地域の集まりに出られない歯がゆさがありますね。参加したい気持ちがあっても、お店をやっているもので、なかなか参加ができずにいます。

Q:パン・ド・ナルさんといえば、手作りの石窯がありますね。石窯のこだわりや特徴について教えてください。

A:石窯は、ひとつひとつレンガを積んで一から造り上げました。約1200個のレンガを使用しています。この石窯を作る前に、焼きものが盛んで石窯が多い愛知県などに視察に行って、どうしたらいい石窯が作れるのか研究をしました。 私がつくった石窯の特徴は、火入れをすると温度が下がりにくいです。石窯で作るパンは火を消した後の余熱で焼きますから、温度は下がりにくい方がいいんですよ。1度火入れをすれば、1 日中約200°C以上をキープできます。石窯で焼くパンは、遠赤外線によって表面と中に同時に火が入るので、表面が硬くなりません。 フランスパンは表面がバリバリに硬いものがよく売られていますが、石窯で焼いたフランスパンは、表面と中に同時に火が入るから、ふんわりとした程よい硬さに焼きあがります。
パン・ド・ナル
(石窯の扉にはパン・ド・ナルの文字を発見!細部までこだわりが詰まっています。)

Q:ハード系のパンとソフト系のパンでは使用する酵母を変えていますね。特徴やこだわっている点は?

A:ハード系のパンには、自家製の自然酵母を使用しています。自然酵母は、できるだけ畑で収穫した季節の果物や小麦、米、芋類などの安心な食材を使用して作っています。春はいちご農園の野口さんの完熟いちごも使用しています。
ソフト系のパンは、世界遺産の白神山地の大自然の中で発見されたとても発酵力の強い白神酵母を自家製の自然酵母と合わせて使用しています。白神山地の酵母は発酵させる力が強く、パンが柔らかく仕上がるんです。
パン・ド・ナル パン・ド・ナル
(坂本さんの自慢の畑を見せていただきましたが、自家製の自然酵母に使用するイチジク、びわ、みかんの木などが伸び伸びと育っていました。元気いっぱいの食材を使用して作る自家製の自然 酵母だからこそ、発酵の力強さや風味の良さが生まれるのではないかと感じました。)

Q:パンを作る上でその他にこだわりや力を入れていることは?

A:イーストは一切使用していません。私はイーストの独特の香りが苦手なんです。
また、添加物が入ったものや人工物をなるべく使用しないようにしています。自家製の自然酵母 に使用する食材もそうですが、パンに入れるハーブなどは、畑で育てている食材を取り入れてい ます。どの世代でも安心して食べられるパン作りを心がけていますね。

パン・ド・ナル パン・ド・ナル

Q:一番人気のパンとおすすめの食べ方を教えてください

A:パン・オ・フルーツが人気ですね。全粒粉の田舎生地にクルミやプルーン、レーズン、 杏、イチジク、クランベリーなどのドライフルーツを練り込んだパンです。ごろっとした具感を楽しんでもらいたいから、細かくは刻まずに大きいままで生地に練りこんでいます。 パン・オ・フルーツは油分が少ないので、バターやチーズなどを塗って食べるとコクが加わって美味しいですよ。


Q:今後やっていきたいことはありますか?

A:私はもの作りが好きなんです。パン作りもふつうの窯だったらやりませんでした。会津で白炭窯の造り方を習得後、他県に石窯作りの視察に行ってどうしたらいい石窯が作れるのか研究し、手作りの石窯を作ったからこそパン作りをしています。今後は、窯を作る仕事もやっていきたいと思っています。作ることの楽しさを共有していきたいですね。

むつざわさんぽ:石窯工房 パン・ド・ナル

インタビューを終えて

田舎暮らしの魅力的な土地が様々ある中で、むつざわでの暮らしを選んでいただき、美味しいパンでたくさんの人の笑顔を生み出す坂本さんに、感謝の気持ちが湧きました。むつざわの地で、 坂本さんのこだわりが詰まったパンを味わえる幸せを感じます。パン・ド・ナルのパンをこれまで何度も食べてきましたが、坂本さんからお話を伺った後で、味わうパンはまた格別でした。こだわりが詰まったパンが作られるまでの背景に触れたことで、より一層美味しさが増して感じました。
坂本さんに会いに、そして、坂本さんのこだわりが細部まで詰まった美味しくて優しいパンを味わいに、ぜひむつざわに足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・写真:yumiko ENDOyukari IGARASHI